サッカー

俺は中学に入った時、チビだったしブサメンだったから
当然のようにイジメの標的になった。

イジメって言っても、筆箱を2階の窓から投げられたり
ウイルスごっことか、弁当をゴミ箱にダンクされたりとか
小学校で壮絶なイジメを受けて不登校になった俺からすれば
調子づいたガキ共の可愛いお遊びだったけどwww





そのうちイジメには女子も加わるようになって、
教師も面倒くさいのか、特に注意することなく見て見ぬふりをしていた。
「やりすぎて、また不登校にさせるなよ」
なんて自己保身全開の腐ったアドバイスはしてたみたいだけど。

言われなくても不登校になんてもうならない。

親が俺の教育方針のことで責任をなすりつけ合って喧嘩をして、
妹が親の怒鳴り合いから逃げるように布団にくるまってるのを見てから
俺は中学では最後まで『理想の中学生』を演じようと
心に決めていたからだ。

中2になった時、公平なクラス分けの結果
クソ担任&イジメグループが見事に俺と同じクラスのままで
俺の中学3年間はこいつらのおもちゃとして終わるんだろうなって
ため息ついてた。

いつもみたいに、休み時間、俺の筆箱サッカーが始まったところで、
俺とは一生縁の無さそうなイケメンが、イジメグループから
筆箱を取り返してくれた。

「貴様ら厨房になってこんな事して
 恥ずかしくないんか?」

イケメンのドスの効いた声に、イジメグループは一瞬で怯んだね。
まあ、でも皆が見てる手前、イジメグループも引くわけにはいかないじゃん?
そうなると殴り合いの喧嘩になるのは明白で、だから俺は笑いながら言った。

「マジになるなよwwふざけてるだけだからww」

そしたらイケメン、マジギレ。

「ヘラヘラせんと嫌なら嫌とはっきり言えや!!
 俺はお前みたいなのが一番嫌いじゃ!!
 こっちこいや!!」

なぜか俺が切れられ、教室の外に連れて行かれるww
人気のない美術室の廊下まで連れて行かれたところで、
俺はボコられると思いビビリまくっていた。

そしたら、イケメンは掴んでいた手を離して笑った。

「これで教室の奴ら、お前んこと
 俺の舎弟だと思い込んだなwww」

その変わりようにぽかんとしたが、
すぐにあれは俺を助けるための
演技だったのだとわかった。

「本当はお前自身がはっきり嫌と言えばいいんだが
 それが出来る奴と出来ない奴がおるけん。
 じゃけん、気にせんと俺のダチになっとけやw」

そいつはサッカー部のエースで、
部内でも人望があって、女子にもモテて、
元不登校の俺とは住む世界の違う人間だった。

スーパー銭湯に行くのが好きで
学校でそいつはおっさんと呼ばれていた。
その個性あるアダ名と親しみやすさ、
人間の鏡みたいな性格とイケメンで
とにかく女子にも男子にもモテる(友達として)奴だった。

俺は例の一件のせいで「おっさんの舎弟」として
おっさん率いるサッカー部グループとつるむようになった。
舎弟というポジションだから、ジュース買ってこいとか言われるんだけど
お金を多めに渡されたり、必ずじゃんけんで俺についていく奴を決めたり
あくまで下っ端キャラごっこを楽しんでいる感じで、なんていうか、
俺はすごく楽しくて嬉しかった。

パシリポジションで嬉しいとか俺も相当マゾだけど
それからは生活が一変した。
夏祭りやサッカーのイベントにも誘われ、今までが嘘だったかのように
充実した中学校生活を送るようになった。
俺が一緒にいると迷惑じゃないかと思って、最初のうちは誘いを断っていたんだが
「お前がいなかったら誰がリンゴ飴の行列に並ぶんだ」
「サッカー部はバカ揃いだから、お前がいないと
 買い物すらまともに出来ない。いいから早く来い」

とにかく、そんなことを言われて俺涙目www
気付いたら、サッカー部のマネージャーにされてて、
毎日部活に出てたww元不登校の俺が部活www
しかも男マネージャーってww

はじめて学校に俺の居場所が出来て、不覚にも泣いた。

サッカー部の鬼顧問が怖くて必死に働いてたら
「お前ら○○を見習え! サッカー部で一番やる気があるぞ!」
と叱咤のおかずにされて俺恥ずかしすぎて涙目www
おっさんが

「俺がスカウトしてきました!」

と自慢気にいったら

「よくやった! 褒美として腹筋50回!」

なんて言われてて、皆笑ってて、もうね、この時間が一生続けばいいと思ってた。

ある日、鬼顧問と廊下を歩いてたら、
うちの糞担任とばったり会って嫌味を言われた。

「○○をマネージャーにしたのは正解ですね。
 こういうのは早めに社交性を鍛えておかないと
 社会に出てから役に立ちませんからねえ」

悔しかったけど、小学生の時に不登校やらかして
親の不和の原因になったクズの俺、言い返せずww
良くしてくれてる鬼顧問の顔を潰してしまって、申し訳なくて
消えたくて涙目ww

そしたら、鬼顧問、クソ担任に真顔で言った。

「こいつが大人になったら、
 少なくとも、あなたよりかは心が輝いている
 人間になると私は確信しております」

クソ担任、言葉なくしてそそくさ逃げてんのwww
鬼担任買いかぶりすぎwww俺元不登校ですよ?
そんな顔してたら頭叩かれて

「お前は誰よりも強い」

とかいってくれてんのwww
そんなこと親父にも言われたことないんだがwwww
なんなんこれwwwどうしてみんなこんなに優しいんだ?
俺の知っている世界はもっと汚くて醜い世界だったのにwwww
ポエム脳の俺きめえwww

そんなポエム脳な俺だったからか、初恋という
スイーツ(笑)なものに落ちた。

おっさんグループとつるむようになってから、
俺はおこぼれで女子ともたまに絡むようになっていたんだが
その中にすごく可愛い子がいて、俺に積極的に話しかけてくれた。
たったそれだけのことだが、俺は惚れてしまったwww
ボディータッチとかもしてくるんですものwwwフヒヒwww

そしたら、おっさんが目ざとく俺の視線に気付いて
サッカー部緊急会議wwwお前ら練習しろwww
ガストで1時間以上話し合った結果、男女のグループで遊びに行って
俺と彼女を二人きりにするという超古典的な方法だった。

イケメンおっさん率いるサッカー部軍団に誘われて、
女子ども喜んでOKwww
もちろん、彼女もその中にいて、目が会った時に微笑みくれたwww
これは脈ありwwなんて調子に乗った俺は一人でそんな勘違いをしていた。

事前に決めた計画通り、ファミレスでだべった後にカラオケにいって
俺ら二人を残して全員消えたwwww
夜、二人きりでしゃべって、一緒にバスで帰って、メアドまで交換しちゃって
とにかく俺にとって最高の夜だった。
今思えば、イケメンがたくさんいる中で、俺なんかに声をかけるなんて
ありえないことなのにね。

毎日メールするようになって、1週間くらいした時だった。
放課後に校舎裏に呼び出されて、俺はマジで心臓が破裂するかと思ったww
おっさん率いるサッカー部に知られたら、絶対についてくるだろうから
俺はトイレにいくといって抜けだしたww

んで、校舎裏いったら彼女がいるわけですよwww
ちょっと困ったような顔してもじもじしてるわけですよwww

その隣に、イジメグループもいたんですけどね。

「ほんとにきたwwきめぇwww
 女子がお前なんかに惚れるわけねーだろww不登校野郎www」
「最近調子に乗りすぎw自分の立場わかってる?」
「お前のせいでサッカー部も迷惑してんだろwww
 大人しく引きこもっとけやww」

イジメグループの主犯が彼女の肩抱いてるわけですよ。
あーなるほどそういうことねってことで、俺の心は
急速に冷めていった。

世界が輝いて見えたけど、それは幻想だったんだなぁってふと思った。
急に全てに申し訳なくなった。
彼女だって俺がいなかったら、こんな嫌な役回りをしなくてすんだのになぁとか
本当はサッカー部には俺はいるべきじゃないんだなって、
自分はクズだってことを改めて教えられたっていうか、
とにかく、俺は今すぐ首吊って世界から消えたくなった。

それからは、イジメグループに囲まれて蹴られたり罵倒されたり、
まあいつもの日常が戻ってきたわけですな。
久しぶりにメガネ割れたよ。
久しぶりに学ランに靴の痕がついたよ。

気分は最悪だったけど、妙な安心感があった。
誤解がとけてよかった。
俺はあそこにいちゃいけない人間だったんだって再認識したwwww
その時だった。

「お前ら俺のダチに何してんじゃこらぁぁぁぁ!」

おっさん率いるサッカー部の連中が
ヤクザみたいな形相しながらイジメグループに襲いかかってんのww
お前ら絶対俺の後ついてきてただろww

それからはもうめちゃくちゃで、サッカー部VSイジメグループの
乱闘になった。
すぐに騒ぎを聞きつけて先生達が出てきて、全員しょっぴかれた。

先生たちの会議が終わって、鬼顧問が
「サッカー部は一週間の活動停止」と言った瞬間

俺は皆に土下座した

「俺のせいで迷惑かけてすいませんでした!
 俺は疫病神です。皆と一緒にいる資格ありません。
 責任をとってサッカー部を辞めます!」

そしたらおっさんが俺の胸ぐら掴んで

「お前が誰に迷惑かけたんじゃ!
 俺は後悔しちょらんぞ!」
「俺はお前を邪魔だと思ったことは一度も無い!」

って泣きながら切れた。

「疫病神ってなんだよwwwマネージャーだろww」
「お前がいなくなったら、サッカー部がまとまらないだろ!」
「サッカー部全教科の平均点が下がる!」
「メガネキャラがいなくなる!」

おっさんに続いて、なんか皆が一人ひとり俺の存在意義を
発表する流れになって、後半ネタ切れしたのか適当になって
俺は笑いながら泣いたwww

「顧問も泣いてる!」
とおっさんが言ったら、ほんとに泣いてて
サッカー部全員それ見て爆笑。

「謹慎過ぎたら覚えていろ!」
と鬼顧問マジギレwww

なんか、それ見てたらネガティブになって
自分は存在意義がないって考えてた自分があまりにも
失礼だなって思った。

彼らとの友情は確かにある。
それを信じようって思った。

こんな何年も前の思い出話を今さら語ろうと思ったのは
別にたいした理由があるわけじゃない。

ただ、明日、久しぶりに同窓会でサッカー部の連中と会うので、
何となく思い出話がしたくなったのかも。

あれから俺は高卒で消防士になって、元気にやっている。
嫌なことも嫌といえるようになったし根性もついた。

偉そうに語れる立場じゃないから、説教はしない。
ただ、俺はおっさんに会って人生が変わって、
まさか消防士になるとは夢にも思ってなかったので、
人生は分からないなぁと、しみじみ思いました。



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